
九年母、トウクリブなどと呼ばれる古代柑橘、クネンボ。
ジャバラや花良治ミカンなど数々の日本柑橘の親になっていることがわかっており
2010〜2016年代の複数のDNA解析では紀州×クネンボで温州ミカンが生まれたとされたことから
注目が集まった古代品種。

紀州は中国の早橘からなるかそれに近縁。クネンボはマンダリンにブンタンが混ざって大型化したもの。そして温州もマンダリンにブンタンの遺伝が混ざったものであることがわかっているが、クネンボには晩白柚などのブンタンの一部に見られる春菊香がある。
そう考えるとクネンボが親である説は有力かもしれない。

クネンボは中国の浙江省から沖縄経由で日本にきたとされるが、クネンボ系の中国品種に本地広橘という品種があるようだ。
DNA解析では奄美のトークネブと本地広橘が同一だったようだが、トークネブとクネンボは葉や果実の形態が若干異なるらしい。
つまりクネンボはトークネブ(本地広橘)の実生か、その近縁種ということになるのだろう。
(本地広橘は翼葉がクネンボより小さく葉幅が細く、果実は楕円か丸でクネンボは平丸形)

糖度は悪くない、減酸した柑橘なら十分甘味を感じるレベル。
普通のミカンもこのくらいが多いよね。

さぁ、食べてみようか、
瓤嚢膜は晩成温州くらいでそれほど厚くない、1つの瓤嚢に必ず2粒ずつ種子が入る。思いのほか甘味が強く味は良い。リモネンのオレンジの香りにリナロールの甘い香りがのるネーブルオレンジ系の香りに近い。ただし後味にやや温州ミカンと同じノナナールの過熟臭があり、果皮より弱いが全体的にペリルアルデヒドとαピネンによるであろう淡い春菊香を纏う。
春菊香は晩白柚や花良治ミカン程度で果皮に多く果汁にはやや少ない。
鹿児島大学が花良治ミカンにはクネンボ香があると書いているが、このクネンボ香は春菊香のことだろう。

いわゆる雑柑類と呼ばれる〜オレンジやグレープフルーツなどは種で見ればマンダリン×ブンタン(ポメロ)からなり
純粋なマンダリンはタチバナやコミカンのようなもので、小さく丸い果実をつける。
一方ブンタン類は大きく、ヌートカトンの香りが基調で晩白柚のように春菊香をもつものもある。
クネンボは遺伝的にマンダリン×ブンタンだが、晩白柚と同じ春菊香を持つブンタンが祖先になっていると考えればこの特異な春菊香も説明がつく。

先にも書いたが、温州が紀州系とクネンボ系のハイブリッドであるとのDNA解析は、温州自身もマンダリンにわずかにブンタンの遺伝があることからこの結果はほぼただしいと見える。
花良治ミカンに似た奄美の諸屯でケラジと呼ばれる花良治ミカンと同じ春菊香はないもののヌートカトンのブンタン香をもつ柑橘があるが、もしもクネンボの子であることがケラジの名前の定義であるなら、諸屯のケラジもクネンボからブンタン香が隔世遺伝したとすれば説明がつく。
ミステリー多き古代柑橘のお話でした。

ではまた。


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